調べていたら、自分の地元に掲載店がゼロだった。
それくらい、このビジネスモデルには確信がある。
日本に10万軒ある「見えない産業」
スナックをご存知だろうか。
居酒屋でも、キャバクラでも、バーでもない。ママがいて、カラオケがあって、常連客がカウンターで話をしている、あの場所だ。
全国に約10万軒。広義では30万軒超ともいわれる。市場規模は2兆円超。
実は、スナックには業界団体がある。2009年設立の全日本スナック連盟(全スナ連)だ。会長は玉袋筋太郎。スナック文化の普及・発展を目的に活動しており、公式では「日本に30万軒ともいわれるスナック」と記している。
だが全スナ連は文化的な普及活動を担う存在だ。デジタル化の話は、別の誰かがやるしかなかった。
そして、食べログにも、ホットペッパーにも、ほとんど載っていない。
出張で地方に来た。夜、一人だ。居酒屋はもう飽きた。キャバクラは敷居が高い。ただ、誰かと話したい。
そういう夜、あなたはどこへ行くか。
答えは「わからない」だ。スナックがどこにあるか、検索しても出てこないから。
これが2兆円産業の現実だ。
DXどころか、今も現金とノートで動いている
スナックの多くは今も、会計は暗算か手書き、支払いは現金のみ、顧客管理はママの記憶だ。
予約システムはない。キャッシュレスは使えない。常連の「十八番」はメモか頭の中にある。
たぶん、だけど・・・
飲食業界全体のDXが進むなかで、スナックだけが別の時間軸を生きていた。
「DXがほとんど進んでいない、数少ない大規模産業のひとつ」
スナックテクノロジーズの創業者・関谷氏はそう言い切った。
スナテクが解いている問題
2024年8月に設立されたスナックテクノロジーズは、「スナテク」というプラットフォームを展開している。
機能は至ってシンプルだ。
- QRコードで来店手続き
- リアルタイム来店状況の確認
- キャッシュレス決済・領収書自動発行
- 顧客管理(誰が来たか、何を飲んだか、十八番は何か)
加えて面白いのが「スナボム」だ。アプリからドリンクをおごれる、デジタル投げ銭システム。出張中に「あのスナックを盛り上げたい」とスマホから送金できる。現在特許出願中。
エアレジやSquareで同じことはできる。でもスナテクは「スナックという業態専用」で包んで、スナボムで楽しさまで設計した。技術的な差分はほぼない。でもやった。
業務効率化ツール、というだけでは足りない。本質的には、スナックを「見えるもの」に変えるプラットフォームだ。
本田圭佑が「デカコーン級」と言った理由
2025年のシードラウンドで1.33億円を調達。2026年にはプレシリーズAで2.22億円。累計3.56億円。
投資家に名前を連ねるのが、本田圭佑が共同創業者を務めるVC「X&KSK」だ。
本田はこう言っている。
「テクノロジーで体験を再設計すれば、スナック文化を海外に広げられる。デカコーン級に成長しうる巨大な事業ポテンシャルがある」
スナックを「日本のナイトカルチャー」として輸出するビジョンだ。荒唐無稽に聞こえるか。
でも考えてみてほしい。寿司も、ラーメンも、かつては「そんなもの海外で売れるわけがない」と言われていた。
地域に掲載店がないほど、チャンスがある
スナテクのユニークな点は、プラットフォームが先行した地域に「独占」が生まれることだ。
食べログやホットペッパーは全国にデータがある。今から参入しても埋もれる。
だがスナテクの現在の掲載店数は全国で約26店舗(2026年時点)。東京・大阪・福岡・山形など散発的な分布で、「Coming soon」の地域も多い。
先に掲載した店が「この地域でスナックを探す人が最初に見つける店」になる。そのポジションは、後から奪いにくい。
私が調べた自分の地元には、掲載店がゼロだった。
一瞬、「掲載されるためにスナックを開くか」と思った。本気で。
それくらい、このモデルには確信があった。
現場系SaaSの本質
スナックテクノロジーズは、特別なテクノロジーを使っているわけではない。QRコードも、キャッシュレスも、顧客管理も、他の業界では当たり前のことだ。
それでも累計3.5億円の資金を集め、本田圭佑が「デカコーン」と言う。
なぜか。
「見えていなかったものを、見えるようにした」からだ。
10万軒あるのに、どこにあるかわからない。毎日営業しているのに、検索に出てこない。お客さんは来たいのに、入り口がわからない。
このギャップを埋めるだけで、2兆円の市場が動き始める。
物販でも、建設でも、農業でも、電気工事でも、同じことが起きている。
デジタル化されていない業界に、「見えるようにする」ツールを持ち込んだ人間が勝つ。
情報格差とよく言われる。でも本当は行動格差だ。
スナテクが解いた問題は、調べれば誰でも気づけた。10万軒あって、検索に出ない、DXゼロ。気づいた人間は少なくないはずだ。でも走り出したのは、関谷氏だった。
あなたの周りに、まだ「見えていない産業」はないか。
